石工と大工の名人の話
鍼灸学校の授業で習ったお話。
よぼよぼのおじいちゃん先生が、精魂込めて授業で話をしてくれました。
先生の名前は山本宏先生。和歌山県立医科大学の名誉教授だったと思います。
たぶん、本やテレビのドキュメンタリーで知った話をお話しして下さったんだと思いますが、とても役に立つ、参考になる話でした。
滋賀県に石工の名人がいて、その方の息子さんは石工を継がなかったために、名人の技術が失われようとしていたときに、名人のお孫さんが祖父の後を継ぐと申し出たとのことでした。
名人はそのとき60歳を過ぎていました。
20年かかって孫に技術の粋を注ぎ込み、一人前に石を加工することが出来るようになりました。
「良かったですね。」とインタビューされた名人は、「ちっとも良くない。石の声を聞けるようになるまで、あと20年かかる。それまで自分が生きていられるかどうか・・・」と嘆いたとのことです。
名人は、石の声を聞きながら仕事をしているのでした。
もう一人、大工の名人がいました。記憶が定かではありませんが、西岡棟梁だと思います。
彼も、木の声を聞きながら、木を加工したり削ったりしているそうです。
南向きで育った木は、南側の柱に使うとか、そういう配慮もされているらしいです。
山本宏先生は、この二つの話を知ってとても感心し、果たして自分が何かの声を聞いて仕事をしているだろうか甚だ疑問であると反省していたある日、自宅で窓の外をふとみると、庭の畑に植えてある苺が赤くなっているのでした。
畑担当の奥様に、「おい、苺がなっているぞ。」と声をかけましたら、奥様は、「まだまだや。軒先をみてみぃ?小鳥たちが知らん顔しているやろう?まだ甘くないから知らん顔しているんや。」と答えたのでした。
ほほう、そんなこともあるのかと、そのときはスルーだったようです。
またある日、たまたま奥様が外出中に、先生が先に帰宅したことがありました。
夏の暑いときで、庭に植えてある菊の花も水がほしかろうと、普段しないのに親切に菊の花にお水をまきました。
すると、あとで帰宅した奥様が、先生に怒るのでした。
「あんた、なんで水あげたんや!」
「暑いから親切にまいてあげたんや!」
「あんた、菊に聞いてから水あげたんか?」
「そんなんできるわけない」
「菊はまだ水いらん、ゆうてるんやし。」
「なんでわかるねん」
「私は菊と話ができるんや!」
というような会話があり、奥様が花や小鳥と会話しながら日々暮らしていることに、はたと気がついたのでした。
家で、家事と畑くらいしかできない、何の取り柄もない女房・・・
いつもさんざん馬鹿にしてきた嫁はん。
そう思っていた奥様は、名人たちと同じようなことをしている。
大学の名誉教授でいばっていた自分よりも、随分と魂のランクが上の人なのではないだろうか・・・
そのようなことに思い至り、愕然となった。
たしか、そのようなお話でした。
聞いてすぐにブログにUPしたかったのですが、3年以上経ってしまいました。
うろ覚えですが、何かの参考になればと思い、ブログに記録を残しておきます。


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